僕が名和晃平さんの作品に初めて接したのは、おそらく『MACPOWER』誌でだ。アートプロデューサーの山口裕美さんの連載「POWER OF JAPANESE ARTS」で、僕はガラスビーズで覆われたシカの姿を目撃したのだった。ガラスビーズによる作品、「PixCell」シリーズにはau design projectのtalbyをモチーフにした作品もあった。「PixCell」は「Pixel(画素)」と「Cell(細胞・器)」が掛け合わさった名和さんの造語で「映像の細胞」の意味。名和さんの作品に魅せられて、2009年1月、僕らは京都にある名和さんのスタジオに向かったのだった。
「PixCell via PRISMOID」は、深澤直人さんが手がけたiidaのケータイ、「PRISMOID」とプラスマイナスゼロの液晶テレビをベースにした作品。「via」は「~経由で、~を通過して」の意味。だから「PRISMOIDを通過するPixCell」。物質とイメージ、アナログとデジタルを往来するメディウムまたはビークルである「セル」が、情報そして情動を乗せて「PRISMOID」を次々と通過していく。「セル」に取り込まれた情報、情動は「PRISMOID」を通過することでデジタル化し、増幅し拡散していく。そしてそれは又、「PixCell」化された液晶テレビを通して再びアナログへと変換される。