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2010年9月30日木曜日

チーム



これからは「アノニマス」でも「デザイナーズ」でもなくて、「チーム」の時代だ。全くもって誰がやったんだか分からなくて曖昧な「アノニマス」。1人のデザイナーの名前がスターのようにきらびやかに舞う「デザイナーズ」。それに対して、「チーム」は、まるで映画のエンドロールのように、そのプロジェクトに関わった全ての人の名前が刻まれるスタイル。

プロダクトデザインの世界、とりわけ日本においては「アノニマス(匿名性)」デザインという考え方に価値を置く傾向にあって、デザイナー名が表に出ることを嫌ってきた。それはそもそもメーカーのインハウスデザイナーによるデザインが主流だったためで、ソニー製品のデザインは「ソニーデザイン」だった。社内デザイナー●●●のデザインといったところで、消費者はそこに何の価値も見い出さなかっただろう。80年代のCIブームの最中で、多くの企業がこぞって外国人デザイナーを採用し、そこでデザイナーの名前が広告的価値を持った。そしてゼロ年代のデザインブームの中で、まるでイタリア企業とデザイナーの関係のように、デザイナーの名前が企業名や商品名と並んで表に出るようになった。

映画とかテレビの世界では、監督やプロデューサーの名前を筆頭に、全スタッフの名前が、観客や視聴者に示される。僕は、そのスタイルがずっと好きだったし、なぜ、他のクリエイティブ分野は、そうなっていないのか疑問に思っていた。もちろん、例えば家電製品に工場のおばちゃんの名前までいちいち入れてたら「耳無し芳一」みたいに字だらけになっちゃうので現実的では無いのだけれど、それが理由ではないだろう。取扱説明書や今ならディスプレイを使ってイースターエッグ的に表示することも容易にできる。

「アノニマス」は出る杭を好まぬ日本人気質とそこから生まれる曖昧な形象のプロダクトと結びついている。「デザイナーズ」はその反動とロマン主義的オリジナリティ信仰を持ち出して差別化を図ろうとする意思と結びついている。
ちなみに「アノニマス」デザインの本来的な価値を否定するつもりはなく、あくまでここでは「アノニマス」の否定的側面だけを語っている。またおそらく「無印良品」はデザインされた「アノニマス」なので、本当は「デザイナーズ」なのだろう。

デザイナー、アーティスト、建築家などなどジャンルの垣根を超えて、繋がり合いプロジェクトが形成され、そこから作品や製品が誕生することが増殖しつつある現在。そうした状況に一番相応しいスタイルが「チーム」だ。

LIGHT POOLのデザイナー、坪井浩尚くんのウェブサイト。各プロジェクトのページには、それに関わった人々の名前が記載されている。

Hironao Tsuboi Design


「リゾームには始まりも終点もない、いつも中間、もののあいだ、存在のあいだ、間奏曲なのだ」ドゥルーズ=ガタリ

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