X-RAYは、雑誌『PEN』の「吉岡徳仁とは、誰だ?」(2009年5月15日号)ではモザイク写真の状態でプロトタイプが掲載されたり、テレビ番組「情熱大陸」に吉岡さんが出演した際には、透明なアクリルのモックアップを吉岡さんが手にしていたり、発表に至るまでにちらちらメディアに露出していました。下記のテキストは、まだX-RAYがプロトタイプでしかなかった頃、書いたもの。
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「デザインとは、かたちを得ることで完成するものではなく、人の心によって完成するものではないかと考えています。また、自然の原理やその働きを発想に取り組むことが、デザインの今後において大切なものとなっていくのではと感じています。」(吉岡徳仁「セカンド・ネイチャー」展より)
大人っぽく深みのある色合いに着色された透明なケースの向こうに、かすかに見える電子部品。一見すると何ら衒いのない、誰も嫌わない形をした二つ折りのケータイながら、計算された透明度と艶と色が、これまでのケータイには無い魅力を醸し出している。
吉岡が目指したのは、かつてのiMacのようなキャンディーカラーのポップな透明ではなく、もっと大人っぽく、もっと高級感のある透明。「自然の原理やその働きを発想に取り込むこと」がデザインの未来だと考える吉岡は、葉の形が自然の摂理に基づくいろいろな理由から出来上がっているように、携帯電話も機械(メカ)、電子機器だけれども自然だと言う。ケータイが複雑な機構や電子部品の組み合わせで出来ている事実=自然を、デザインされた形で隠蔽してしまうのでなく、かすかに見せること。それが、単に美しいデザインで終わらない深みのある魅力をこのケータイにもたらしている。
このケータイのもう一つの魅力、透明ケース越しに見えるサブディスプレイは、電光掲示板を使った作品で知られるアメリカの現代アーティスト、ジェニー・ホルツァー(Jenny Holzer)を思わせる美しい演出になる予定だ。
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