道具作りの鉄人/岩崎一郎 そしてG11
岩崎さんは自分のデザインに関して寡黙だ。取材もあまり受けないから、岩崎デザインの魅力を岩崎さん自身の言葉から探り出すのは容易でない。なので、僕の頭の中に浮かぶ言葉を羅列してみる。「道具」「手」「丁寧」「凛」そして「優しさ」。そう、岩崎さんは飛び切りいい「道具」を頭でなく「手」で作る人だ。丁寧に作られた「道具」。凛とした佇まいを持つ「道具」。それでいて人なつこい優しさを感じさせる「道具」。岩崎デザインのアイコンであるミューテックの電話機、Contrastのグラスやエスプレッソメーカー、ラタン製の子供用チェア、、、ほら、みんなそうだ。
今回、iidaから発表したG11は、前作G9の後継機として企画された。持つ喜びを感じる「道具」としてのケータイを作り上げること。Gシリーズのミッションはこれに尽きる。Gシリーズの原形は、2001年に発表したコンセプトモデルGRAPPA、GRAPPA 002。GRAPPA(グラッパ)は、ご存知のとおりイタリアの蒸留酒のこと。コンセプトモデルの名前を岩崎さんにお願いしたら、考えてくれなかったので、、、岩崎さんとミラノで飲んだ思い出のグラッパを名前にすることに。一見、適当なネーミングだけど、グラッパの凛とした味わいとコンセプトモデルの凛とした佇まいが僕の中では繋がっていた。G9そしてG11の「G」は、そのコンセプトモデルGRAPPAの頭文字。後ろの数字は、発売の年。G11は2011年に発売するからG11。
「持つ喜び」という表現はカメラの上位機種や腕時計、あるいは万年筆のようなアイテムで良く使われる。ただ、本当に「持つ喜び」を感じる上質なプロダクトに出会うことは、そう多くはない。とりわけケータイでは。ケータイを、持つ喜びを感じる道具として仕立てることのできるデザイナーは岩崎一郎しかいない。G11の来春発売まで残り数ヶ月。岩崎さんは開発メンバーと共に丁寧に丁寧に仕事を進めている。
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