デザインケータイの10年:三宅一生とゼロ年代のデザインシーン
2000年4月29日から8月20日にかけて東京都現代美術館で開催された「三宅一生展 ISSEY MIYAKE Making Things」。それまで国内の美術館でファッションデザイナーを取り上げた大規模な展覧会が開催されたことはなかった。1998年から1999年2月28日までパリ・カルティエ現代美術財団にて開催され、翌1999年ニューヨークを経て、東京へと巡回してきたこの展覧会の空間デザインを手がけたのは当時、三宅デザイン事務所にいた吉岡徳仁さん。この展覧会を訪れた時、僕はまだ吉岡さんのことを全く知らなかったけど、吊り下げられたPLEATS PLEASEの服たちが楽しそうに飛び跳ねるインスタレーションなど、とても新鮮で驚きのある空間デザインは感動的だった。
そして「A-POC」*1。「A-POC」は「A Piece Of Cloth(一枚の布)」の意味で、もちろん「エポックメイキング」ともかけている。三宅一生さんと藤原大さんによるこのプロジェクトは、これまでの服作りとは全くことなる、まさにエポックメイキングな技法を編み出したプロジェクトだ。「A-POC」は、コンピューター制御された織機を使った一体成型により、始めから服になっている一枚の布を織り上げる。一枚の布に描かれた切り取り線に沿ってハサミを入れていくと、パンツやシャツ、スカートや帽子が出来上がる。カットの仕方で、シャツの丈を長くしたり短くしたりも自由にできる。このようにイノベーティブな試みである「A-POC」は2000年のグッドデザイン大賞を受賞した。「A-POC」の最初期のプロダクト(?)に「ミダス」という人の形をしたクッションソファがある(2000年)。それがどうしても欲しくて、吉岡さんが空間を手がけた南青山の「A-POC」のショップで購入した。無印良品の「体にフィットするソファ」に頭と手と胴がついたようなとてもユーモラスなソファは今もお気に入り。
滝沢直己さんがクリエイティブディレクターを務めていた2000年春夏ミラノメンズコレクションでは、村上隆さんとのコラボレーションKai Kai Ki Kiを発表した。その後、村上隆さんは、2001年に東京都現代美術館で大規模な個展「召喚するかドアを開けるか回復するか全滅するか」を開催。2003年にはルイ・ヴィトンとのコラボレーションで、現代アートに関心が無い人でも知る存在となっていく。
2003年1月28日の朝日新聞に、三宅一生さんは「造ろう デザインミュージアム」と題した記事を発表。そして2007年3月、21_21 DESIGN SIGHTが六本木の東京ミッドタウンにオープンする。ディレクターは三宅一生、プロダクトデザイナー深澤直人、グラフィックデザイナー佐藤卓。
かくしてゼロ年代、三宅一生さんの元でファッション、プロダクトデザイン、インテリアデザイン、グラフィックデザイン、コンテンポラリーアートなど多様なクリエイティブ領域が様々に交差し新しい世界が生まれていった。なんだかんだで、デザインケータイも含めゼロ年代の日本のデザインシーンは全ては三宅一生さんの掌の上の出来事だったような。。。そうそう、AppleのCEO、スティーブ・ジョブズがいつも着てる黒のハイネックだってISSEY MIYAKE ! (関係ないか)。
深澤直人さん&藤井保さんの「THE OUTLINE」展(21_21 DESIGN SIGHT)のレセプションの際に一生さんと立ち話をした。2009年9月に21_21で開催したiidaの新商品発表会、一生さんはとても気に入ってくれたようだった。「一生さんが今使ってるケータイは何ですか?」と聞くと、ポケットから現れたのはシルバーのINFOBAR 2。「僕、パソコンとか携帯電話とか、全然ダメでね」と笑顔で見せてくれたINFOBAR 2の裏面には、電話番号がデカデカと書かれたシールが無造作かつ大胆に貼られていた。
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*1 三宅一生さんによる、第22回京都賞記念ワークショップ 「デザイン・テクノロジー・そして伝統」において、藤原大さんがA-POCについて語っている。僕のお気に入りのクッションソファ「ミダス」の写真も。
【参考】会社としての「イッセイミヤケ」を知るには川島蓉子さんの力作『イッセイミヤケのルール』(日本経済新聞出版社)がお薦め。
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