iida Exhibition 2010 Summer: LIGHT POOL 坪井浩尚/高木正勝
坪井浩尚さんと僕が初めて仕事をしたのは、au design projectのコンセプトモデルSOLAR PHONE CONCEPTS(2008年)の時だ。「SOUP」というコンセプトで作られたソーラーパネル搭載ケータイのプロトタイプは、とても美しいケータイだった。ディスプレイとボディを隔てる縁、ソーラーパネル、スピーカー、カメラ等、ケータイをケータイたらしめている要素を極限まで溶かし込み、純粋な美しさを持ったケータイだった。しかし、それはあまりにコンセプチュアルで、プロダクトとして作れるものでは到底なかった。
そしてLIGHT POOL。今回は量産モデルだ。この形に至るまでにボツになった案が2案。かなり短期間のスケジュールの中、もうダメかなと思った最後の最後に今回のLIGHT POOLのプロトタイプとなる案が出てきた。建築的な造形と美しい光の演出。コンセプチュアル過ぎることなく量産性もそれなりに考慮された意欲的なアイデアだった。とはいえ、そこからの量産に至るまでのプロセスは、僕が携わったどんなケータイよりも困難なものだった。
トラス構造をモチーフにフレームと三角窓で構成された造形は、ケータイを一つの「建築」あるいは「風景」としてデザインしようという坪井さんの意志の現れである。三角窓から溢れる光そして心地良いサウンドが作り出す情景は、私たちをやさしく包み込む建築物のように私の時間と空間を豊かに満たしてくれる。光、音、匂い、気配。辺り一帯に美しく作用するケータイ、それがLIGHT POOLだ。
LIGHT POOLの光とサウンドを制作したのは音楽家/映像作家の高木正勝さん。au design projectの「ケータイがケータイし忘れていたもの展」(2007年)で、森本千絵さんのケータイ「sorato」のために、坂本美雨さんとのコラボレーションで美しい音楽を手がけていただいたこともある。
LIGHT POOLでは22個のLEDを自由に操り、ストーリー性溢れる光と音の情景を完成させた。辺り一帯に美しく作用するケータイというLIGHT POOLのコンセプトを最も明快に具現化しているのがロングプレイモードだ。高木さんが制作したロングプレイモード用の光と音が10パターンプリセットされており、部屋の中で長時間再生して楽しむことができるようになっている。
「モノ」のデザインではなく、「風景」のデザイン。LIGHT POOLが紡ぎ出す光と音の情景は、ケータイと私たちとが共有する時間・空間に新たな価値をもたらしてくれる。高機能、高性能という言葉では語れない価値。それをLIGHT POOLは実現している。
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